聴衆を飽きさせないプレゼンシートの役割と表現力……絵ごころでビジネス力アップ!

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閉鎖ブログ『ビジネスに役立つ絵ごころ入門』から、選り抜きした作品を転載(加筆修正)しています。

その第7弾は、プレゼンターとプレゼンシートとの役割とその表現方法です。

聴衆を引き込むプレゼンテーションとそうでないもの。一体何が違うのでしょうか?

ひとつには、“プレゼンターが語り、プレゼンシートが見せる”という立体的な表現アプローチにあると考えます。

 

第7話:相手の目を止めさせ、理解から行動に繋がる伝言メモの書き方

 

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ありゃ、ありゃ……。
恵賀くんは「こりゃ、ダメだぁ」と、下市くんのプレゼンテーションを聴きながらため息をつきました。

何がダメかというと、視線はスクリーンと手元資料を行き来するだけ。語り口調は一本調子です。
多くの関係者に向けて新規プロジェクトを賛同、協力してもらう重要なプレゼンなのに、この発表レベルではうまくいく提案もダメになってしまいます。

ただ厄介なのが、下市くん自身は手を抜いているわけではなく、精一杯にプレゼンをしているつもりであることです。
しかし、聴いている者は誰一人、下市くんの説明に対して前向きな反応を示していません。携帯電話をのぞき込んだり、資料に落書きしたりと、皆はあきらかに集中力を切らしています。
もし下市くんの御両親がこの状況を見たら、大いに嘆いて自分の息子を演壇から引きずり下ろすことでしょう。

恵賀くんは分析しました。何がよくないのか……と。
「ふん、ふん。なるほどね」
その原因をすぐに特定し、ウンと頷きました。

とにかくひどいのが、スクリーンに投射されるプレゼン・シートの出来映え。
文字だらけのシートなのです。延々と文章が続くスライドを見ながら、下市くんがただ単にそれを読んでいるだけなのです。
そう、プロジェクターに映る情報は下市くんの台本になっていたのでした。だから視線もそれに釘付け状態です。

恵賀くんはついに黙っていられなくなり、席から勢いよく立ち上がりました。
そして下市くんへと近づいて行ったのです。

 

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恵賀くんは静かに下市くんの肩に手をやりました。人差し指を立て、下市くんが振り向くと同時に頬へ指が突き刺さります。

思った以上にきれいに刺さったと、恵賀くんの表情は緩みました。
しかし、ここは喜んでいる場合ではなく、下市くんに進言しなくてはいけません。

「あんたのプレゼンは見てられないよ。なんだい、その一方向な視線と棒読みは……!」
プレゼン中の下市くんを強引に制止させる恵賀くん。
一瞬、何が起こったのかわからず戸惑う下市くん。
二人を見つめる聴衆は、その様子に固唾を飲んでいます。

「あんた、映画を観るかい?」
唐突に、恵賀くんは下市くんへ質問をしました。
「それもウエスタンなんて、どうだい?」
下市くんはどう対応していいのかわからず、固まっています。

「懐かしいねぇ、ジュリアーノ・ジェンマ。それにフランコ・ネロ」と、恵賀くんはマカロニな路線で攻めてきました。
「ラストシーンのカメラアングルを、あんた想い出しなよ。そう最後の決闘シーンさ……。主人公の顔のアップ。そしてカメラがロングに引いて、相手との距離を捉える。その時間は止まっている……」
ひと息呼吸おいて、恵賀くんは低音で決めました。
「このカメラワークこそ、プレゼンテーションなんだよ」
口が開いたままの下市くんに、恵賀くんは続けます。
顔のアップにあたるのが、プレゼンでのトーク。そして俯瞰的なシーンを見せるロングショットが、スライドの役目なのさ」

そう言い残して、恵賀くんは自席に戻ろうとしました。
「どういうことなんだよ。それだけじゃわかんねぇよ、恵賀!」
その声は下市くんではなく、二人を見守っていた聴衆からでした。
どうやら下市くん以外が、その説明を聞きたがっているようです。

さらなる教えを請うために……

 

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「わかったよ、みんな。ボクが説明してやるよ」と恵賀くんは、プレゼンしていた下市くんを脇に追いやり、聴衆の正面に立ちました。
そして早速、お得意の説明口調で語り出します。

「プレゼンターとスライドとの関係は、左脳と右脳。おっと、これはロジャー・スペリーの理論だよね。全体イメージをつかむ右脳部分には、スライドを使って俯瞰的な情報を与えること。そして直列的な処理を得意とする左脳には、きっちりと言葉にまとめて説明していく」
恵賀くんは、いつの間にか下市くんのスライドを消去して、自分のデータをスクリーンに投影していました。
「各々方、これをご覧あれ」と、スクリーンを指し示します。

「スライドに描く情報は、そこで伝えるべき対象を全体的に捉えたものなんだ。文字情報だったら論理図解にまとめ、数値ならグラフなんかにしてみる。聴衆にとっては目から入る情報が先行するから、視覚化によってシートの概要を大づかみしてもらえるよね。そのためにスライドを使うのさ」
恵賀くん越しのスクリーンには、聴衆の目が釘付けです。

「次にプレゼンターが話すポイント。それはこのスライドにある重要な箇所を具体的にはっきりとフォーカスしながら、自分も重要なメディアとして表現に加わることなんだ。スライド任せにするのではなくてね。理路整然と説明しながらも、自分の考えや想いを言い表すなど聴き手の感情に向けたメッセージを送ることも忘れないように……」
恵賀くんは咳払いを挟んで、少し間を空けました。

プレゼンターのパーソナリティを通した詳細な情報と、スライドを用いた全体像とのコラボレーション。これが映画のカメラアングルのごとく、アップシーンとロングショットにたとえるナイスな比喩と相成ったわけさ」
そう言い残し部屋を出る恵賀くんは、デビュー42周年のビリー・ジョエルに敬意を払いながら「ストレンジャー」の口笛をクールに吹くのでした。

第7話おわり

 

《バックナンバーのリンク》
 第1話:プレゼンテーションで我を取り戻す方法
 第2話:対立する議論を冷静に収める方法 
 第3話:資料作成で図解をクールに、しかもホットに描くコツ 
 第4話:聴衆を惹きつけるプレゼンには欠かせない、ホワイトボードでの演出術
 第5話:臨場感あふれる議事録の仕上げ方
 第6話:相手の目を止めさせ、理解から行動に繋がる伝言メモの書き方

 

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